■シリウスの道〈上〉 (文春文庫)
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購入、もしくは詳細を知っている方など、一般のアマゾン利用者より寄せられた感想。 総合平均おすすめ度: 藤原伊織の集大成的小説 ある意味で、「ビジネス小説」である。 主人公の辰村は、藤原作品の主人公に共通する「美学」を持っている。 それは、過去に生きてしまって、過去にこだわり、それでも今を シニカルに生きている、ややキザな男だ。 これが鼻につく人は、そもそも藤原伊織の小説は読めない。 ここに、気の強い女性、インテリヤクザなどがからむ。 これまでこのパターンを、藤原伊織は頑なに崩そうとしなかった。 書評などでさんざん叩かれても、どこ吹く風で自分の小説スタイルを変えなかった。 もしかしたらそれが藤原伊織本人の美学だったのかもしれない。 末期癌を宣告されても平然と死ぬのを待ったのも彼の美学だったのか。 もちろん葛藤はあっただろうが、それを表に出さない痩せ我慢だ。 この「シリウスの道」は、主人公辰村はむしろ脇役で、 戸塚英明という若者の「成長物語」だと感じた。 最初はお坊ちゃんだった若者が、ひとりの骨のあるビジネスマンに育っていく、 その過程がむしろメインストーリーだと言ってもいい。 異論はあるかもしれないが、そういう読み方をしてもいいと思う。 最後に―― もう藤原伊織の新しい作品が読めないことは残念でならない。 ワンパターンだ、団塊の郷愁だと揶揄されながら、 我が道を行く作品を書き続けて欲しかった。 そうだ、仕事をやるときゃ、その姿勢でいつも胸を張ってろ。 大手広告代理店の営業局副部長辰村は、今の仕事を続けることに疑問を感じはじめていた。 そこへ大手の弱電メーカー大東電気から名指しで競合の申し込みがあり、本来担当していない辰村の営業局が指定されてきた。 大東電気には辰村が個人的に会いたくない人物がいて、それは、幼い頃の思い出がからんでいる。 広告代理店の競合の様子にあわせて、主人公の幼い頃の事件が織り込まれ、お話が展開していきます。 主人公の仕事のさばき方や、部下のやりとり、手腕を発揮する女性上司の様子など、現実味を帯びていて、とても面白く読めます。 藤原伊織の総決算的な作品 「ひまわりの祝祭」の絵画、「てのひらの闇」の広告、「蚊トンボ白鬚の冒険」の株取引といった素材を再投入、さらには、酒以外にはホットドッグしか出さないバーを舞台装置として「テロリストのパラソル」の世界観、登場人物に接続する総決算的な作品となっている。「テロリストのパラソル」のアル中バーテンダー島村と著者自身を足して2で割ったような主人公の造形といい、広告業界の内情の踏み込んだ筆致といい、なりふり構わぬ全力投球ぶりは、本書の中の言葉を借りれば“未来永劫”を考えない腹の据わりを感じさせる。退職、癌宣告といった著者の私生活と決して無縁ではないだろう。本著には著者略歴が記載されていないが、本作自体が著者プロファイル、といった趣がある。主人公の38歳という年齢が、藤原伊織本人で言えば「ダックスフントのワープ」でデビューした時期に当たっていることも興味深い。 藤原作品の主人公は、ハードボイルド作品の常としてダンディズムを身につけている。その“美学の中味”には正直辟易する部分もあるのだけれど、“やせがまんの矜持”だけではなく“弱さ”も自覚しているところに共鳴する。主人公は“赤の他人に自分の弱点を無条件に晒すことのできる”人間には結局勝てないと実感している。本書の評価は、弱さを晒さずに現実の虚飾を生きてきた団塊世代(主人公の実年齢と乖離はあるけど)が、「あの時代にもどれるとしたら...」「どんなに貧しくても、あの時代にみんながもどれたらいい」と本音を漏らすことの是非によっても分かれるだろう。 メール、Webといった新しいメディアと電話の使い分け、プレゼン案のディテールのリアリティなどはさすが。吉田修一の「パークライフ」の舞台だった日比谷公園がこの小説でも印象的な場面で使われているが、大手町、銀座からほどない距離のあの場所は、現実から過去への回路なのかもしれない。 十分に楽しめる作品 2006年度版このミス10 6位。 2005年文春ミステリーベスト10 7位。 大手広告代理店の副部長、辰村がこの作品の主人公である。 25年前の大阪で友人明子のためにおこした事件とそれに関連した脅迫事件を軸に、新規ネット証券会社のCM獲得のための活動、女性上司との恋、新入社員の成長をうまく絡めて、一級の作品に仕上げている。 作者が広告業界出身のせいか、その内幕を読むだけでも十分に楽しめる作品である。一方、作品の前半部分では一般人にはなじみの薄い広告業界用語が登場人物の説明無くぽんぽん使われており、内容をつかむのがすこし難しかった(なぜか作品の途中からこの問題は解消する) 作品のエンディングもありきたりの終わり方でないのがよい。 夢中で読める一篇のすぐれた小説として 本書は藤原伊織氏の小説の中で、もっとも入り口の広い作品だ。全共闘って?蚊トンボが頭に入り込むって何?と思った人も、本書なら抵抗を感じないだろう。かつて藤原作品になじめなかった人、ピンとこなかった人に、ぜひとも読んでみていただきたい。 広告業界を舞台にした小説。大手広告代理店の副部長・辰村祐介のもとに、電機メーカーから新規事業(ネット証券)の競合案件が舞い込む。予算18億。それは彼が封印したはずの過去が呼び込んだ仕事だった・・・ 藤原氏が電通社員だったことが存分に活かされた設定で、業界の内幕〜緊迫感漲る競争の苛烈さ、社内の軋轢などがたっぷりと読める。細部に至るまで書き込みつつも、スピード感を落とさず活写する手際はさすが。文章の味わい、会話のうまさ、人物の魅力はやはり突出している。現在と25年前の過去パートの書き分けも見事だ。 人物にふれると、とびきり有能ながら組織からははみ出し、自分の魅力にまったく無頓着な主人公(こんな人一度お目にかかりたい!)、敵対する人物と彼を認めサポートする男たち、優秀な美貌の女性(上司)、突飛だがまっとうで才能溢れる女の子・・・こうした人物は藤原作品ではお馴染みとも言える面々で、そこにひっかかる向きもあろう。だがそれはマイナス要因ではなく、もはや様式美の域。気にせず藤原ワールドに浸ろう。さらに本作では、主人公の部下として清々しい青年が登場!! 要注目だ。 本作は、2005年の「このミス」6位。ミステリともハードボイルドとも、企業小説、青年の成長物語とも読める。この際ジャンルにこだわらず、夢中で読める一篇のすぐれた小説として、ぜひお手にとっていただきたい。 |
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